『本当にキックを足しただけです。』という日本語の裏にあるもの

というわけで、Persona 4の曲がかっこいいということで、Never Moreのeditもしてみました。

https://soundcloud.com/sirrow/never-more-cs-house-edit

で、ここに『本当にキックを足しただけです。』と書いてあるのですが、キックを足すためだけにやった作業がどういうものであるかということについてちょっと書いてみようと思います。

  • サンプラーのセッティング

Battery1. ディケイの調整

キックの胴鳴りの長さは、家で聞いているとよくわかりませんが、低音がちゃんとなる場所で大きい音で聞くと影響が大きいパラメータです。
短ければさっぱり目。長ければ沈むような感じになることが多いので、曲のイメージに合わせて調整します

2. 音程の調整

もともとなっているキックとの相性を考えておかしくない高さにします。

3. 音を汚す

大昔のサンプラーは、ビットレートが低かったり、ビット深度が低かったりします。そういう音をきいて育ってきているので、最近の高性能なサンプラーだと逆に音が綺麗過ぎて物足りないなーって思うことはやっぱりたまにあります。
昔であれば、サンプラーから音を出した後に、デシメータやビットクラッシャーで音を汚すのですが、最近のサンプラーには、昔のサンプラー風の汚れた音を出すというパラメータがあったりしてこれで事足りたりするからすごいです。いやー。すばらしい。

  • 元音源の音質調整

もとの音源は、もちろんハウスじゃありませんので、キックを足したらハウスになるように音質を調整していきます。
キックは自分で足すから控えめに。ベースとハットは目立つように。みたいな気分で。あと、全体的にちゃきっとするように高音少し強めかな。みたいな。

  • 元音源のベースと足したキックの関係の整理

一般的に、世の中に出回っている音源は、各帯域の音量が極端に大きくならないように、マスターにマルチバンドコンプを刺します。これで、キックとベースが同時になったときに、妙に低音が膨れたりしないように調整されています。
しかし、今回は後からキックを足しているので、キックがなったときに低音が大きくなりすぎないように調整する必要があります。
なので、サイドチェイン入力がマルチバンドコンプを元音源のチャンネルに入れ、低音にコンプレッションをかけます。もちろんサイドチェインには今回追加したキックを入れます。これによって、キックが鳴ったときに元音源の低音(=ベース)の音量が小さくなるため、キックを目立たせつつ、低音が大きくなりすぎることを防ぎます。

  • 元音源のキックと足したキックの関係の整理

元音源の低音は「元音源の音質調整」で削りましたが、それでもアタックの部分は低音だけではなく比較的高音(4000Hzくらい)まではあるので、やっぱりぶつかったりしますし、低音もEQでは削りきれず、元音源のキックと足したキックが同時に鳴った場合に、すごくキックが大きく聞こえてしまうという場合があります。
これを解決するため、元音源とキックを足した場所(たとえばmaster)にマルチバンドコンプを入れ、元音源のキックと足したキックが同時になって音量が増えた場所のみにリダクションがかかるように調整します。
これにより、キックが同時に鳴ることによる違和感を抑えることができます。

  • 最後に音質調整

で、最後にEQとかで音質を整えて、リミッターとかで適当に音量を稼ぎます。

 

『本当にキックを足しただけです。』の作業内容は以上となります。
キックを足すだけでも結構大変なんだからね!

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