2014年4月17日に e-onkyo より「Snow halation楽曲ファイルを更新したので再DLしてください」という旨のメールが届きました。(という事をtwitter経由で知りました。)
以前に『ラブライブ「Snow halation」 CDとe-onkyoハイレゾ音源聞き比べ』というblogエントリを書きましたし、やっぱりここは更新された音源についても色々調べてみようってことでちょっと頑張ってみました。
以下、Snow halationのCDの音源を「CD版」、更新前のハイレゾファイルを「旧ハイレゾ版」、更新後のハイレゾファイルを「新ハイレゾ版」と記載します。
検証は、前回同様Sonar 8.5、iZotope OZONE5を用いています。
新ハイレゾ版第一印象
旧ハイレゾ版と比較し、voが前に出てきている。おそらく2000~4000Hzあたりが大きくなっていたり全体の音量が大きくなっていたりするのだろうという印象を受けました。
あと、ギターの音はCDのものになっていました。
検証1 旧ハイレゾ版と新ハイレゾ版を逆相にして混ぜる
もともと、CD版と旧ハイレゾ版でギターの音に異なるものが使われていて、ちょっとした話題になっていたのですが、新ハイレゾ版ではCDと同じギターの音が使われています。このため、旧ハイレゾ版と新ハイレゾ版を逆相にして混ぜると、ギターの音だけが大きく残ります。
ただ、このときに残っているのは、ギターの音だけではなくて、voの2000Hz以上や、他のトラックの音も残っていました。このため、旧ハイレゾ版と比較し、ギターをCDで用いていた音に差し替えた上で、おそらく、マスターのEQのセッティングを変更したのではないかと考えられます。
検証2 音量を比較する
以前のエントリ同様に1番のサビから25小節(「届けて切なさには」から「まもなくSt」まで)の音量の比較を行います。前回はRMSに関しては、目で適当に確認していたので適当な値だったのですが、今回はまじめにチェックしたため値が変わっています。
|
CD版 |
旧ハイレゾ版 |
新ハイレゾ版 |
ピーク |
-0.0db |
-0.1db |
-0.2db |
VU |
-4.8db |
-5.4db |
-5.0db |
LUFS |
-6.0db |
-6.8db |
-6.4db |
各調査項目についての説明が以下です。
- ピーク
デジタルのデータ上でもっとも大きい瞬間の音量。最大値が0.0db。値が大きいほど音量が大きい。
- VU
0.3秒の音量の平均。人間の耳は急な音量変化には反応できず感じる音量は0.3秒くらいらしいので、人間の感じる音量に近いらしい。使ったメーターが VUの最大値をキープしてくれないので目で追いかけてこれくらいが最大かな、と思った値を使用。これも値が大きいほど音量が大きい。
- LUFS
VUでは音量の平均だけを取っていましたが、もっと人間の感じる音量に近づけるために、いろいろ計算しているメーター。放送するときの基準音量などに用いられている。25小節のループ区間の平均値を使用。これも値が大きいほど音量が大きい。
ピークだけは新ハイレゾ版が一番小さいですが、VUとLUFSについては新ハイレゾ版は旧ハイレゾ版より大きくCD版よりも小さいという事がわかりました。第一印象はどうやら正しそうです。
検証3 周波数ごとの音量のバランス比較
周波数ごとの音量バランスについても、前回と同様、、iZotope OZONE5についている、マッチングEQ用のスナップショット機能を用いて、1番のサビから25小節のスペアナの平均値を取りました。
まずは、旧ハイレゾ音源と新ハイレゾ音源の比較です。
ぱっと見ほとんど差がないのですが、拡大して確認すると次のことが言えます。
- 30~80Hzは新ハイレゾ版のほうが大きい
- 80~180Hzは旧ハイレゾ版の方が大きい
- 300~600Hzは新ハイレゾ版のほうが大きい
- 800Hz以上は新ハイレゾ版のほうが大きい
- 特に3200Hzあたりが新ハイレゾ版のほうが大きい
ざっくり言うと、ベースの帯域以外は新ハイレゾ版のほうが大きいという事になります。
ついで、CD版と新ハイレゾ版の比較です。
- 900Hz以下はCD版のほうが大きい
- 2000Hz~6000Hzは新ハイレゾ版のほうが大きい
- 9000Hz以上は新ハイレゾ版のほうが大きい
という感じでした。新ハイレゾ版は、CD版や旧ハイレゾ版に比較し、主旋律の入る音域のが大きく、なんとなくvoが前に出てきている印象になっていることがデータ上もわかりました。
あと、CD版にあった高域の出っ張ったところも新ハイレゾ版ではなくなっていました。いい感じです。
まとめ
新ハイレゾ版はいい感じでした。CD版、旧ハイレゾ版、新ハイレゾ版と3つ聞いてきましたが、新ハイレゾ版が一番よいと思います。修正された箇所はギターだけではなく、音域のバランスに対する修正も入っており、これがなかなかいい感じだとおもいます。
全体の音域バランスを見直したであろうその結果として、新ハイレゾ版は旧ハイレゾ版と比べると音量が大きくなっています。が、出すべきところを出して、その結果いい感じになってるし、いい感じだと思います!
以上、ざっくり、いい感じになったと思いました!
おまけ
今回の一件では、更新データの再配布が行われました。これは、従来、CDではコストがかさんで事実上不可能なことであったと思います。電子的な配信であるからこそ、なしえたことだと思います。これは、従来CDという物理媒体で物を売ってきた人たちにとって、全く新たな試みであり、各種調整も大変だった出あろうと思います。
音源を修正してくれたという事それ自体がとても喜ばしいことではありますが、「修正した音楽データを再配布した」という前例が出来たことが非常に価値があるのではないかと感じています。これについては、もっと深く考えなければならない点であると思います。
同列で語るべき事象かどうかは難しいところですが、音楽と同じくデジタルソフトウェアである家庭用ゲームではゲーム本体や修正パッチなどがインターネット経由で配布されることはとっくに当たり前になっています。
また、「後日、追加のデータやブックレットを追加配信する」といったような、デジタル配信だからこそ可能な商品の形態も考えられるのではないかと思います。
ゲームで言えば、あとで追加ダンジョンを配信する。みたいな。
そんな感じで、音楽というデジタルソフトウェアと、それを取り巻く業界が、この観点でどのように進んでいくのか、一消費者としてゆるゆると見守りたいと思います。
追加検証
新ハイレゾ版の音量を-1.0dbして、旧ハイレゾ版と重ねると綺麗に消えるよという情報をいただいたので、確認してみました。
うちの環境では新ハイレゾ版-0.9dbすると、確かに大部分の音が綺麗に消えました。唯一Aメロの前半に入っているベルの音が消えませんでしたが、なんか理由はよく解りません。
どうやら新ハイレゾ版のほうが全体の音量を大きくした上で、マスタリングを行っているようです。
色々聞き返したところ、マスターのEQのセッティングが変わっていることよりも、0.9db多く突っ込むことによってマスターのコンプレッサーの動きが変わった差分が聞こえている感じがします。